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ホ−ム
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第4話
■はじめに
今回のこだわりはほんの1ミリの事でもありますが、私のこだわりの基本と考えています。この考え方を元に家造りに取り組み、造家工房・亀井の仕事はこんな所に特徴があるんだなということを判って貰えればありがたいです。
といことで、「1mm」にこだわる私の大事な「道具」を、そうして大工用語からを少し紹介したいと思います。この道具なくしては大工仕事は語れません!
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大工用語や道具
1)図板(ずいた)
まず墨付する前に私達は、60p×60pぐらいの板に平面図と土台伏せ図、柱伏せ図、2階床伏せ図、屋根伏せ図を書き番付けを入れていきます。横軸にイロハニ・・・、縦軸に一二三四五六・・・と符号を付けます。これを図板といいます。
昔は符号の代わりに、うさぎや蛇の絵などが書かれた絵番付けというのもあり、字の読めない職人達にもわかるよう書かれていたそうです
。そこには材料の大きさ、長さ、高さ、仕口、継ぎ手の位置などを書き、確認します。
中には「図面はオレの頭の中にある」と言って、図面を書かずに仕事をする大工もいますが、私の場合は図面を書かないと出来ないんです。
他にお寺など屋根に曲線が出てくる場合などは、実際に原寸を書き、型板を取ったりして確認します。このときに材料の大きさや高さなどのバランスを比例関係で表すことを
「木割り」
といい、これを使うことでバランスのよい形、空間、使いやすい高さ、建物を美しく見せる寸法で作る事が出来ます。
2)墨付け
曲尺(さしがね)、墨壺、墨刺を使って実際の材料に穴の位置や継手の位置や形の印を付けていきます。
2)曲尺(さしがね)
曲尺は昔、聖徳太子が考えた道具と聞いていましたが?曲尺の表は寸尺の目盛りで、裏面はそのルート2倍が刻まれています。
この道具一つで三角形はおろか、円や曲線を描く事や、足し算、引き算、掛け算、割り算から比例計算まででき、ピタゴラスの定理もわかるのです。
そうしてたまには見習いの頭をパシッとはたく道具にまで使われていたそうですよ。<(`^´)>
4)墨壺
(すみつぼ)
墨壺は家を建てるのに一番最初に使う道具
で、この道具から家が建ち始めるといっても過言ではないと思います。そんな大事な道具だから昔は皆、自分で彫って使っていたんですよ。私も、2つ3つ作って使っていますけど、なかなか使いやすいものは作れなくて・・・。
墨壺で大事なのは真っすぐな線を引く墨糸
だと思います。これは細ければ細いほどいいんだけど、細ければ切れやすいし、太ければ芯がどこだか分からない。この糸一本で家が真っすぐに建つかが決まってしまうほど、神経を注いでもよいもので、糸のくせを抜いて使いやすいようにするには手間がかかかります。
5)墨刺し(すみさし)
墨刺し(すみさし)は線と字を書く道具
で、竹を12ミリくらいに割りそれを48枚に細かく割って線を書く。そして反対側は先をつぶして筆のようにして符ちょうをつける道具。
理想の墨刺しは線を引くのに、1回墨をつけて2間(3.6メートル)ぐらいは書き続けられるものがよいとされているそうですが、細かく割って長く書くのはどちらにしてもなかなか出来ないことなんですよ。
5)規矩術(きくじゅつ)「大工と雀は隅で鳴く(泣く)」
この道具達を使って部材に墨をつけるときに使う技術を規矩術(きくじゅつ)と言います。なんか忍法みたいだけど。 先輩大工から、
「大工と雀は隅で鳴く(泣く)」
ってよく聞かされたことわざがあります。これは屋根の隅木の仕事のことで、この曲尺の表目と裏目をたくみに使って墨付けし刻みをする場面で、規矩術術をよく理解していないと困るという所というところで、スズメは屋根の上でチュンチュ鳴くし、大工達は難しい仕事で泣かされるということだそうです。
■私の目標
こうしてこれらの道具と規矩術を使って墨をつけます。ここで大事な事は
継ぎ手や仕口の場所
上からの荷重がかかる所に継ぎ手や大きな節を持ってこない
柱の仕口を集中しない
(集中してしまうと断面積が小さくなりその部分が弱ってしまう)
材種はどれで、その材料がどちらかに反るか、どれだけ縮むか、
材種・材料を見て仕事を変えていく
ことなどです。
たとえば、梁が柱にささるところで松に換えて杉でする場合、杉は松に比べて少し柔らかい木だから、荷重で木が少しつぶれやすいので、柱に少し深めに差し込んだりと、木と木を組むという事は部材を切ったり彫ったりして、お互いを傷(いた)めて組んでいくわけで、その傷(いた)め方を最小にして、組んだ時の強度は最大にするという事です。
そこで大事な事は
部材に生じる力を感じて、木をよく診てその場所に最適と思われる仕事にする
。節があったらよけて、柔らかければ仕口を変える、こうしたことは今までのいろいろな経験から選択し、自分なりに味付けし仕事をします。法律ではあまり詳しく書かれていませんが、構造計算をする時は何回も実験してその値の下限値で強度を出して計算していきます。だから、こだわって、丁寧に仕事をすれば計算以上の耐力は必ず出ると信じてやっています。
私が前の会社で北勢町のお寺の山門の屋根替えへ仕事に行った時、屋根裏に隙間がないくらい、びっしり丸太が縦横無尽に組み込まれていました。「どうやってあんな丸太を探してきたのか?」、1本の丸太が上に曲がって下に曲がって今度は横に曲がって、こんな材料をまあ、見事に組んでありました。
「これが規矩術かあ〜」この時のこの大工の仕事の美しさと力強さが今の私の目標となっているような気がします
。
■墨付けと刻(きざ)み
墨付けが終わると刻(きざ)みに入ります。
刻みで大切な事は墨どうりに刻む
、これって結構難しい!墨線の巾0.1〜0.5ミリの内と外を刻むのでは、仕口が堅くて入らなかったり、ガタガタでゆるかったり、加減が難しいのです。またその上、材料の乾き具合でも違うのです。
私が大工になって3年目ぐらいの頃、東京の宮大工の下で仕事をさせてもらった事がありました。その刻みの時、材料乾燥してないほうだったので、私が「親方、墨の内側刻むんですか?」と聞くと、
親方がちょっと怒って「俺の墨は墨の真ん中を刻んでいいように墨付けしてある!」と言われました
。
そうです、本当の墨付けはすべての条件を頭に入れて、墨付けする者が墨を付けていくんです。だから建てた時なんかに、一度墨を見てください。墨の真ん中が刻まれてい
るかどうか?そこでやり方とか、仕事の良し悪しが見えると思いますよ。
■いい刻みをする為に心がけていること
この刻みで大切な事は、刻み方ひとつで仕口や継ぎ手の強度が変わってしまう
、ということです。それは木を加工するのに大工は道具を使って穴を掘ったり、切ったりします。そのときに穴を深く掘りすぎたり、ノコ目を深く入れすぎたり、ノミの一突きやノコギリの一引きが木の繊維を傷め、弱らしてしまいます。その事でどれだけ弱くなるかそれはわかりませんが、注意すればしなくても済むことです。
そのために道具は手道具にせよ、電動工具にせよ、手入れをし、いつでも切れるようにしておきます。
切れ味の悪い道具は仕事をする時によけいな力が入り仕事が汚く、遅い、余分な所も傷つけ部材を弱める、その上、怪我をしてしまう事にもなりかねません
。そのために私達は切れる刃物を探し、その刃物をよい研石で研ぎます。ことわざで
「穴掘り3年、鋸5年、墨付け8年、研ぎ一生」
とあります。これほど刃物を研ぐのは難しい事なんです。その刃物によって研ぎ方を変えたり、材料の種類によっても変えたりで、こういうことが解ってくると、刃物が切れ、仕事も速くきれいに出来、仕口、継ぎ手なんかも100%の耐力が出せるように刻めてきます。
だから私達はノミや鉋、そして研石などよい道具を探し暇があれば研いで、よい仕事が出来るように心がけています
。
■
木造伝統構法について
さて墨付けのところでも出てきた木組み、木構造の事で、昨年半年間名古屋のほうへ勉強会に通っていましたが、そこで一番勉強したかった木構造について書きたいと思います。ここではおもに私がやりたい木造伝統構法についてです。
木造伝統構法と在来軸組み構法の違いは、
木造伝統構法
は部材が大きく金物も使わず、貫や土壁を使い木と木で組んでいく昔ながらの構法
で、
在来軸組み構法
は部材が細く、仕口や継ぎ手が簡略化され金物にたよった構法です
。
まず木造は全般的に、他のRC造(コンクリート)、S造(鉄骨)に比べて、いろいろ特徴がありますが、
一番の特徴は変形能力が高い
、ようするに粘り強いということです。この粘りで大事なのが仕口、継ぎ手の強度、これらが強ければ強いほど建物に粘りが出ます。木造には枠組み構法(2×4)やパネル構法などがありますが、この粘り強さをうまく利用した構造が伝統構法です。
建物にかかるいろいろな力を受けてくれる壁を耐力壁といいますが、その耐力壁にもいろいろ種類があって、土壁や筋交(スジカイ)、構造用合板など、そしてその種類によって受ける力が違うんです。その力の大きさを示す値を
壁倍率
といいます。
そして
伝統構法の特徴が一番はっきり出せる壁が土壁なんですよ
。なぜかというと、これは伝統構法場合、通常の筋交(スジカイ)とボードのような壁倍率が2以上のものだと、あまりにも壁が強すぎて、力を受け変形した時に、応力が柱の上下や仕口、継ぎ手などに集中して、その部分が破壊されてしまうのです。筋交でも同じです。柱のホゾを折ってしまったり・・・、 私達が勉強した実験では、筋交が梁に突き刺さっていき、梁がむしり取れてしまったものもありました。だから伝統構法には向いてないんです。
破壊実験の結果は竹こまい荒壁上中塗り仕上げでも、2倍近い耐力があり基準法でも0.5倍だったものが、1.5倍に認めてもらえるらしいですよ
。
伝統構法は力を受けて傾いても、傾く程どんどん耐力が上がっていく、しかし他の構法、枠組構法やパネル構法、それ以上にRC造やS造などは耐力は伝統構法よりも大きいものもありますが、許容範囲を超すとガクッと耐力が下がってしまうのです
。
普通のプレカットの木造軸組構法でも筋交いがはずれたり、折れたりした時、応力が一気にかかり、ボルトだけでひっぱている部材は、柱や梁にちょんと架かっているだけなので、家が大きく傾いた時は、掛かりがはずれて部材の落下という事にもつながります。
こうなった時は建物の倒壊につながり人命も危ぶまれ修復する場合でも莫大な費用がかかる事になるのです
。
一方伝統構法の場合は、適正な倍率の耐力壁にしたとき、大きな力が加わっても粘りが強いため、倒壊する事はなく人命も助かる確率も大きいと思います。
そして修復する時土壁を塗り替えたり、込み栓を打ち変えたりと最小限で済むと思います
。
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実際の地震には耐えるのか?
そこで前から思っていたのですが、
「こういう構造計算や破壊実験をやっても、実際の大地震の時に役に立つのか、1枚の壁の強度、壊れ方がわかっても、地震のときはどれくらい壊れるのか、全然見当がつかない」
と講義の時も先生に質問しましたが
「
現在の建築基準法では大地震のときの400ガル(地震が起きたときのゆれの加速度)まではもたせましょう。
」という事らしいです。
その400ガルってどのくらいっていうと、中小の地震ということだそうで、阪神大震災では、900ガル以上の力だったらしいです。それでは意味がないということになりますが、100年くらいに一度の地震を想定する事は基準法では考えていないのかな・・・?
それじゃあ阪神大震災の時に、住宅は全部倒れたかというとそうでない、これがわからない。住宅はいろんな構造がありいろんな間取がある。地盤や築年数、柱の大きさ、自重、大工の仕事の良し悪し、ひとつの力が加わるといろいろなものに伝達し、力が伝わっていく、その力
の向きや、大きさ、速度、振動周期などで複雑に違ってくると思う。はっきり言って構造の先生でもまだわからないことがあるらしいですよ。
そこではっきりしているのが壁の強度、それに頼って計算するしかないですよね。これは仕方がないと思うのですが、
大工の立場から言うと仕口の仕事や材料によってもすごく左右されると思います
。今現在としては基準法以上の耐力壁にするのとバランスのよい壁配置、ひとつひとつの仕口、継ぎ手を100%以上の強度になるように丁寧に仕事をするしかないのかなあ。
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壁倍率と耐力壁の数の建築基準法の考え方(参考に)
建物に地震力(震度5以下)が加わった時に、横方向に働く力は建物の自重の2割と考えます。そのときに壁倍率1の壁は1枚(910×2700)200sの力に耐えられますよ。そして自重の2割の力に耐えるのに倍率1の壁は何枚要りますか?という考え方です。壁倍率が2の時は1枚の壁が(2×200=400)400キログラムの力に耐えられますよという考え方です。けどたんに壁の量が基準を満たしていればよいというものでもありません。どちらかに偏っていては意味がないんですよ。
以前に家一軒耐震実験をしている所をみました、が何回も揺するとそのうち家がひねり出してくる。そうするとすぐに倒壊でした。木造軸組みはひねりにはすごく弱いんです。
私達が造る仕口や継ぎ手は一方向には強いけれど、ひねりには弱いんですよ
。だから壁をバランスよくいれて、揺れても平行に揺れるようにする。均等に力が伝わっていくようにする。
そういうことは家を立てる前の家の間取、プランニングの時から考え始めるんです
。
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最後に
私が色々勉強し、また日々木と接して感じていることは、基準法をクリアするのも大事な事だけれども、継ぎ手や仕口の強さとか全体の微妙なバランスは、造っている大工にしかわからないこともあるということです。
そうして私は、
日本で千年以上続いていた木造の歴史こそ、本当にすごいと思うので
す。昔の匠たちがそのとき出来る精一杯のことをし、建物を造ってきた。それを私達大工が代々受け継いで、今日の建築にその技術を使って次の代に繋げていくのです。
ということは、
今残ってきている技術は、千年の試行錯誤で確立されてきた技術で、ここ10年、20年の耐久、耐侯試験で実証された技術とはわけが違う
!そのすばらしい技術を習得し、新しい技術も取り入れ強い家造りを目指していきたい。
宮大工の西岡棟梁の言葉に
「ただ一筋に墨を打つ」
があります。この0.5ミリに満たない墨の直線の中にも広く濃いこだわりがあり、木と技術(こだわり)をつなぐ線になり、この墨から一軒の家が建ち始めます。
この1ミリもいかない細い線を、「人」と「木」と「心」をつなぐしっかりした線になるよう描き、仕事をしていきたいと思っています
。
ここまで書いた事は今まで自分の頭の中にあり、自然と仕事をしてきましたがいざ文章にしてみると、すべてを書き表すのは難しいものです。今回、表せなかった事はいつかまたお伝えできればと思います。
2004年1月28日更新
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